ランドデザイン

露地設計〔茶室の庭〕の紹介 約260m2(77坪)tea ceremony garden mock design

題の通り露地設計の紹介をさせて頂きます。こちらは4年ほど前に私の造園設計の先生にご指導頂きながら設計をした本格的な露地になりまして、40年ほど前に実際にあった茶室移設の案件を題材としたものになります。私が生まれる10年以上も前のお話ですね。。

模型は1/50です。

I created a mock design based on the design of the landscaping work associated with the relocation of the tea room that existed more than 10 years before I was born.

This is the work done by my teacher.

敷地面積77坪ほどの土地に茶室を移築する際の造園設計だったそうです。

茶室は大正〜昭和に活躍した 北尾春道 氏の手掛けた4畳半の茶室でして移築先の敷地図(当時の先生の計画案の図面)を元に製図・模型化ました。完成した図や写真、具体的な門や茶室の建築図面はなかったのであくまでも自分の想像上の模擬設計になります。

The site area is 260 square meters, and the tea room was designed by Syundou Kitao, who was active from the Taisho to Showa eras.I didn’t have any architectural drawings, so I borrowed a site plan and designed it.

設計内容はこの様に『流れ』を中心とした二重露地でして中門を流れの中の『沢飛び石』としており、アカマツや樫などの高木と灌木・コケなどの地被を中心とした2層植栽にしスッキリと洗練されつつも『流れ』があるので柔らかくしっとりとしたイメージの露地です。

The content we designed is traditionally two-tiered tea ceremony garden with a river flow as its main feature.

This garden is called “nijyuu-roji” and is suitable for holding tea ceremonies.The tall trees and shrubs are planted in two tiers, giving it a clean and sophisticated look.

露地門の眺め。スッキリとした瓦葺きに袖は2寸ほどの竹の鉄砲垣

門や茶室は人工物として庭を引き締めますので配置はやはり庭屋と相談して決めるのが良いと思います。出来れば建築を始める前に造園図面を出してもらうのが一番良いですね。

View of the tea garden gate.

Gates and tea rooms serve as decorative features that tighten up the garden, so I think it’s best to discuss their placement with the gardener. If possible, it is best to have landscaping drawings submitted before construction begins.

門までの伝い。斜めや鉤の手を使い淡白にならないよう、距離・遠近感がボケるように設えると趣のある空間になります。

無意識に矛盾を感じ脳の錯覚し印象に残るのでしょうかね。

露地は石や木をそのまま使うことが多く淡白になりすぎる・間が抜けやすくなってしまうので輪郭線を上手くデザインしてあげることが趣のある空間に仕上げるコツになります。

The path to the gate.
Using complex shapes like keys increases the sense of perspective.

By making it difficult to understand the actual sense of distance, you can create an atmospheric space.

待合には沢を渡って寄りつきます。植木や石で少し遮ってあげると柔らかく見え景色と調和しますし、正客一行が座っても絵になりますね。

石材は青黒〜赤褐色など暗めの石材を想定していました。

Cross the stream to get to the Koshikakemachiai.

Slightly blocking it with plants and stones creates a softer view that blends in with the scenery, and it looks great even when guests are sitting there.

 

で、なんと、この案件の模擬設計をした2年後に縁があり、たまたま頂いた庭の雑誌の中に掲載があったのです。

あの図面の庭はどの様になったのだろうか、そもそもどんな茶室だったのだろうかと気になっていた中での出会いで不思議な運命を感じ、思わず驚きが声に出てしまいました。

実際の露地には『流れ』はなく茨城県で産出されていた筑波石のゴロタを使った『あられこぼし』の園路があり、ナラやカシ、カエデやモミジなどの雑木風の中木を含めた3層植栽をしてある野趣に富んだお庭でした。

驚くことに腰掛け待合の三和土(たたき)は整形せず、雨落ちも設けずボカしてあって周囲と良く馴染んでいますね。

Surprisingly, Two years after I did the mock design for this project, I happened to come across an article about it in an old garden magazine I had received.

It’s a strange fate, but I was very happy.

The actual tea garden does not have a “river flow”, but a “Arekoboshi” garden path made of Tsukuba stone gorota produced in Ibaraki Prefecture.

The plants were planted in a rustic style.

 

茶室から見たつくばい・腰掛け待合。

白川石の延石と紋飛び石の伝いが憎いほど非常に巧妙な配置でして、これを見ただけで先生の顔が浮かんでくるようです。

普通は紋付きの飛び石は踏む位置には打たないのでこれは家紋ではなく意匠的な創作紋なのでしょう。

私の模型は『延段』といって直線的太い舗装を配置しましたがこちらは全て飛び石形式です。

つくばいの手水鉢は釜形の創作もののようですね。筧は青竹でなく敢えて煤けた飴色の竹を使っているのでしょうか非常に侘びた風情を醸し出しています。

All of them are made of old stones, and the stepping stones with carved crests are especially impressive.

The water basin was modeled after a tea kettle.

貴人口の眺め。緑量感があり背景のコナラや足元のセキショウやシダなど草類も野趣に富んでますね。

置き灯籠は寸松庵型ですかね?笠は跳ね上げで作ってあり少し格式を上げており、貴人口に相応しい置き灯籠ですね。

There are stone lanterns at the entrances and exits of people of high status.

It is of the Sunshoan type, but the shape of the hat seems to give it more formality.

門周り。礎石の上に栗の名栗丸太を柱に使い銅葺きに冠瓦を載せた門ですね。袖も名栗丸太で高く堅牢に作られています。

これは露地門より手前にある門でしょうけど私の想像とは全く違ったものでした。

所詮机上の空論での模擬設計でしたがとても勉強にはなりました。何より時を経て先生と同じ案件に触れることが出来、その後どうなったのかも知れて嬉しかった。

The gate has a very sturdy design.
The pillar is made from carved chestnut logs called Naguri.

露地設計の白図。離れの茶室や住居を兼ねたものやマンションのなど様々な露路を用意中。

勉強の為に模擬設計を続けてはいますがここ2年は住宅の庭・外構が多かったので、そろそろ茶庭・露地をまた設計しようと思っております。

 

茶会などの茶席に入ると若めの男性ともあり珍しがられ職業のことをよく聞かれます。

『庭を作っています』と言うと必ずと言っていいほど『木が直ぐに伸びるのでバッサリ切った』『庭の手入れが大変で困る』『うちの植木屋はどこどこのお庭に管理に入っている』という事を聞きます。前者二つは設計者不在のまま作られたお庭でしょうから部屋の中で馬を買おうとしているようなものでして、後者に至っては分業化された多重下請け構造の末端に過ぎないと思いますが、当然そんなことは言えません。

作り手に『茶碗って投げたり落としたりしたら割れるのよね』『釜ってすぐ錆びるから塗装したのよ』って言っている様なものなのでは?と思いショックを受けますが、それも素直な感想であって我々造園業界人の怠慢の結果でしょう。

 

庭の場合は茶碗や茶入れや建築の様に『物』ではなく『空間』とか『コーディネート』ですので目に見えにくいのに加え専門的な分野ですから、きっと分かりにくいのでしょう。

植木や草花のことは皆さん私よりずっと詳しく知ってらっしゃいます。

 

茶の庭に関しては未来が暗いと感じ気持ちが離れていましたが、やはり茶の庭を作りたいのでいざチャンスが来たら掴むことができ、宮川さんにお願いして良かったと思ってもらえるように日頃から鍛錬はしておかなければなりません。

またいつかこの図面と模型も記事にしてアップしますね!

最後までお読みくださりありがとうございました。